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国が旅行の入口を絞っても、青森へ行く人がいる

中国人訪日客の減少と青森へ来る個人客を入口に、団体旅行の管理、個人観光査証、地方が旅行者とつながる経路を考える。

日本への中国人旅行者が減っている。そういう報道のなかで、青森には旅慣れた個人客が来ている、という話が気になった。

僕が読んだ朝日新聞の青森の記事から、考えてみたい。関連する記事には、「中国人客はなぜ青森を訪れるのか 訪日自粛下でも選ばれる理由とは」という見出しがある。

国同士の関係が悪くなっても、自分で旅先を選ぶ人がいる。その行き先が東京でも京都でもなく、青森である。というか、そもそも国は、国民の海外旅行のどの部分を動かせるのだろう。

中国の《中国公民出国旅游管理办法》を読むと、その問いが少し具体的になる。

減っていることと、来ていることは両立する

まず、減少自体は印象だけではない。日本政府観光局(JNTO)の2026年8月推計値では、中国からの訪日外客数は41万8,000人、前年同月比59.0%減。1〜8月の累計でも290万4,600人、前年同期比56.7%減となっている。

JNTOは背景として、中国政府による日本への渡航を避けるよう求める注意喚起と、航空便の減便などを挙げている。ただし、この統計には観光以外の入国者も含まれる。減少分をそのまま団体旅行の減少と読むことはできない。

ここで面白いのは、全体が減っていても、地域によって同じ動きになるとは限らないことだ。

エクスポート・ジャパンの分析は、朝日新聞の青森の記事を参照し、個人旅行客やリピーターを重視する誘客、SNSでの発信、OTAとの連携を紹介している。同社による宿泊旅行統計の集計では、青森の中国人延べ宿泊者数は2026年1〜4月に前年同期より増えているという。

この集計は参考になるが、延べ宿泊者数は訪日人数と同じではない。長く泊まれば増えるし、ここでは集計の再計算まで行っていない。8月の全国統計と1〜4月の青森の集計を、同じ期間の比較として扱うこともできない。

それでも、「中国人客が減った」という大きな話の下に、異なる旅行の経路があるのでは、という問いは残る。

法律が管理するのは、旅行を組み立てる経路

《中国公民出国旅游管理办法》は、国務院令第354号で2002年に公布され、2017年に改正された行政法規だ。国家移民管理局の本文と司法部の国家行政法規庫で確認できる。

第1条の対象は、旅行会社が中国公民を組織して行う海外旅行。第2条は、公表された目的地国家以外へ中国公民を組織して旅行させることを原則として禁じている。鍵になるのは「组织中国公民」という部分だ。

この条文だけを読んで「中国人個人は、政府の認めた国にしか行けない」と言い切るのは、対象を広げすぎる。

旅行会社の事業資格、団体名簿、専任の領隊、団体単位の出入境も規定されている。旅行を売る会社から、国境を通る団体まで、管理がつながっている。

そして、これは昔の制度の痕跡というだけでもない。文化和旅游部の2026年7月の旅行会社への許可公告でも、本弁法が根拠として挙げられている。

僕には、旅行者の行きたい気持ちを一人ずつ変えるより、旅行を成立させる経路を管理する仕組みに見える。

ただし、この弁法が存在することと、今回の訪日減少が特定の条文の発動で起きたことは別だ。現在の注意喚起、事業者への働きかけ、航空便、予約の変化を、それぞれ追う必要がある。

個人旅行でも、旅行会社が消えるわけではない

ここは少しややこしい。

個人旅行なら、パスポートとビザを取って、自分で飛行機とホテルを予約すればよい。日本人としては、そう考えがちだ。でも、中国から日本への観光旅行では、その理解に補足が必要になる。

在中国日本国大使館の2026年7月1日付案内では、団体・個人の観光査証とも、指定旅行社を通じて申請する。個人観光一次査証では添乗員は不要だが、旅行会社を使わない申請と同義ではない。

予約や日程の扱いも査証の種類で異なる。たとえば同案内の五年数次査証では、本人による航空券・宿泊の予約や日程の決定・変更が認められている。

つまり「団体か個人か」という二分だけでは、旅行者がどれだけ自分で動けるかは分からない。申請経路、査証の種類、すでに持つ渡航資格、現地での行動を分けて見る必要がある。

見る対象主に確かめるもの
中国から出られるか旅券・出境資格・個別の出国制限
旅行商品を組織できるか中国側の旅行業許可・目的地制度・行政通知
日本へ入れるか日本側の査証・入国審査
現地でどう旅をするか査証の条件・旅程・交通・予約手段

個人旅行という言葉の中にも、制度との接点は残っている。具体的な適用は、当該在外公館や指定旅行社、必要に応じて中国法の専門家に確認が必要だ。

日本には何度も来た。でも弘前は初めて

青森の話を考えるうえで、弘前市が公開した外国人観光客向けアンケートの要約も興味深い。

市立観光館とりんご公園で集めた2,531件の回答では、個別手配が81%。日本への来訪が2回目以上という回答は90%を超える一方、弘前は初めてという回答が89%だった。

これは中国人だけの数字ではなく、調査地点に来た外国人回答者全体の結果だ。県全体の旅行者構成を示す数字でもない。ただ、「旅慣れた人が地方へ来る」という話を具体的に考える材料にはなる。

初めて日本へ行く人にとっての有名な場所と、何度も来た人にとっての次の場所は違う。

この違いは、単に旅行者の好みの問題なのだろうか。推測ですが、旅慣れていることは、魅力の感じ方だけでなく、移動や予約に必要な手間も変えているのかもしれない。初めてなら不安な乗り換えも、何度も来ていれば計画に入れられる。

青森県の2018年度の包括外部監査報告書にも、団体旅行向けの事業と、Ctripと連携した個人旅行向けの事業が分けて記載されている。個人客へ届く経路をつくる取り組みには、以前からの蓄積がある。

同じ国の客でも、同じ入口を通っていない

少し単純化してみる。

ある地域への旅行者を、団体経由の人と個人手配の人に分けたとする。政策や市場の変化が、二つの経路へ同じ強さで届くとは限らない。

以下は、人数の構成だけを見るための独自の思考実験だ。実際の青森の推計ではない。

変化前の団体客の割合を w、団体客の減少率を a、個人客の減少率を b とする。両者で対象の旅行者をすべて数え、減少率が地域間で共通なら、全体の減少率は w × a + (1 − w) × b になる。

仮に団体客が80%減、個人客が20%減なら、団体比率70%の地域では全体が62%減る。団体比率20%の地域では32%減る。同じ国から来る旅行者でも、入口の構成だけで影響が変わる。

もちろん、個人客にも渡航注意、査証手続、航空便の減少、周囲の反応は届く。上の仮定で個人客も80%減るなら、地域の構成差は消える。個人旅行が政策の影響を受けない、というモデルではない。

むしろ確かめたいのは、どの経路が、どれだけ変わったかだ。

青森についてこの説明を検証するなら、同じ期間で、団体・個人の比率、訪日回数、査証の種類、宿泊日数、交通経路、予約の流入元を見たい。旅行者の構成が違ったのか、泊数が延びたのか、交通条件が違ったのか。SNSやOTAの取り組みがどれほど寄与したのかも、宿泊数が増えたという事実だけでは切り分けられない。

地方に残る、旅先としての理由

地方の観光事業を考えるなら、国別の人数に加えて、どの経路から、どんな人が来るかが気になる。

団体の商品造成に接続することと、個人が検索し、移動を調べ、予約できるようにすることでは、必要な仕事が違う。弘前市の調査でも、交通の便数や利用方法、飲食店の情報や予約が課題として挙がっている。

そう考えると、地道な情報発信は旅先の写真を増やすことだけではない。そこへ行く手順が分かること、着いてから過ごせることまで含めて、行きたい気持ちが旅行になる。

国が旅行の入口に手をかける。その影響は大きい。それでも、青森という具体的な場所を、自分の旅先として選ぶ人がいる。

その人は、どこで青森を知ったのだろう。何を見たくて、どの経路を通って来たのだろう。

大きな数字の下にある、その旅程をもう少し見てみたい。

Sources

確認日:2026-10-07 JST。

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