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国際送金にブロックチェーンを使う理由は、誰が台帳を持つかにあるのか
24時間送金という見出しから、共有状態・決済資産・運営主体を分けて技術の必要性を問う。
国際送金を24時間動かすために、ブロックチェーンを使う。そう聞くと、エンジニアとしては一度立ち止まる。普通のデータベースとAPIではだめなのか。それを誰が作って、誰が管理するんだろう。
きっかけは、世界17行でブロックチェーンを使った送金を試すというニュースだった。24時間送金できるのは便利そうだけれど、それにはブロックチェーンが必要なんだろうか。そもそも、誰が作って、誰が管理するのか。まずはBISの公開資料から、銀行同士で台帳を共有する仕組みを考えてみたい。ここで扱うのは仕組みの比較で、ニュースのシステムそのものの解説ではない。
24時間応答することと、決済が終わること
BISの2024年のProject Agorá開始資料では、トークン化した商業銀行預金とホールセール中央銀行マネーを共通基盤で扱う構想が示されている。Bulletin 87では、事前確認やアトミックな決済の可能性が論じられる。
この二つは2024年の資料で、起点の記事の17行がAgoráだと確定する材料にはしない。気になるのは、メッセージが届くことと、資産の移転が確定することを分けている点だ。
| 層 | 設計で決めること |
|---|---|
| 通信 | 指図をいつ送受信できるか |
| 台帳 | 残高や債務の正本をどこに置くか |
| 決済資産 | 何を渡したら支払ったことになるか |
| 確定性 | どこで取り消せない状態になるか |
| 統治 | 参加、更新、障害復旧の権限を誰が持つか |
APIが夜中にも返事をしてくれても、資金や承認が使えなければ処理は止まる。24時間化は、台帳の種類だけで決まる話ではなさそうだ。
照合を減らすと、合意の仕事が増える?
ここからは、導入判断を考える独自のコストモデル。参加者数を 、実際に二者間接続がある組の数を とする。全組が直接接続するなら だが、ハブがある実際のネットワークでこれをそのまま使ってはいけない。
一組あたりの年間照合・運用費を 円/年とすれば、二者間型の費用を と置ける。共有基盤側は、固定費 、参加者あたりの接続費 、共同運営の調整費 を使って、
と置く。すべて年間費用に換算する。同じ機能、同じリスク水準で比較できるなら、 が共有化の条件になる。
でも、この式が示すのは共有基盤の候補価値であって、ブロックチェーン固有の優位ではない。集中型の共有基盤も、同じ比較へ入れられる。分散型を選ぶ理由は、単独の管理者を置けないなど、誰が状態更新を承認するかの要件へ戻って調べる必要がある。
速さの価値も、二種類ありそうだ
決済待ちの資金を考える簡略モデルとして、一日あたりの平均処理額を 円/日、平均待ち時間を 日とすると、
と置ける。定常的に流入し、待つ間は同額の資金を拘束する、という強い仮定だ。ネッティング、信用供与、流動性バッファを省いている。
待ち時間が半分なら、このモデルの拘束資金も半分になる。ただ、共有台帳の処理が速くても、本人確認や資金準備が待ち時間を支配していれば、 はほとんど変わらない。
「速いデータベース」ではなく、「どの待ちを取り除く基盤なのか」と聞いたほうが、採用理由に近づけそうだ。
運営主体を、役割に分解して探す
次に資料で確認したいのは、開発会社、運営法人、ノード運用者、ルール変更の承認者だ。これらは同じ組織とは限らない。さらに従来の照合費 と、新基盤の を比較し、決済待ちのどの部分が短くなるかを見る。
アナロジーとしては、社内DBを共通サービスへ集約する話に似ている。ただし、別々の銀行・法域にまたがると、一社の管理者権限で全員を従わせる前提が置けない。技術的な確定と法的な確定も別に確認が必要だ。
実際の費用や待ち時間はまだ測れていない。今のところの見方は、ブロックチェーンの必要性は「夜中も動く」ことより、「誰の台帳を、誰の承認で正とするか」に現れそうだ、というものになる。
Sources
- 日本経済新聞「国際決済網、ブロックチェーンで24時間送金 世界17行で試験運用」。問いのきっかけとして見出しを参照。
- BIS, Project Agorá開始発表、2024-04-03。
- BIS, Next generation correspondent banking, Bulletin 87、2024-05-30。BIS資料の確認日:2026-09-16 JST。
- 技術比較は筆者の考察。個別システムの決済の法的確定性は専門家に確認が必要。
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