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雲の水は誰のものか――人工降雨の効果と説明責任

人工降雨を地球のプログラム化という比喩から離して、効果の測定、反実仮想、意思決定の問題として考える。

ドローンで雲に働きかけて、雨を増やす。そんな話から「地球がプログラム可能になるのか」と考えた。自然をインフラとして操作する未来は、SFみたいで気になる。

でも、少し立ち止まる。命令した場所へ、命令した量の雨が降るのとは違う。雨が降ったとして、それが自分の操作によるものだと、どう確かめるんだろう。

雨を増やす条件と、増えたと分かる条件

WMOの2025年声明は、気象改変の効果が雲や条件に依存すること、評価に物理的・統計的な検証が必要なことを説明している。対象情報は2024年6月までで、2026年の個別案件の評価ではない。

GAOの2024年技術評価では、レビューした研究の追加降水量の推定は0〜20%だった。ただし研究には限界があり、任意の場所でその増加率を期待できるという意味ではない。

操作できることと、操作の効果を測れること。この二つの間に、思ったより距離がありそうだ。

同じ雲の、もう一つの未来が欲しい

介入したときの降水量を R(1)R(1)、しなかったときを R(0)R(0) とすると、欲しい効果は、

ΔR=R(1)−R(0)\Delta R=R(1)-R(0)

になる。どちらも同じ期間・領域で集計したmmとする。同じ雲に二つの現実を同時に起こせないので、観測された降水量だけでは差を直接測れない。

ここからは評価設計のための簡略モデル。対象条件を満たした独立な機会を、介入群と対照群へ無作為に分けると仮定する。それぞれ nn 件、降水量の分散を共通の σ2\sigma^2 とすれば、平均差の標準誤差は、

SE=σ2n\mathrm{SE}=\sigma\sqrt{\frac{2}{n}}

となる。σ\sigma とSEの単位はmm。ある効果 ΔR\Delta R に対し、効果と標準誤差の比を一定に保ちたいなら、必要件数は概ね σ2/(ΔR)2\sigma^2/(\Delta R)^2 に比例する。効果が半分なら、同じばらつきの下で件数は四倍必要になる。

これは必要サンプル数を正式に算定したものではない。検出力や有意水準も省いた関係式だ。それでも、ドローンが精密になったから、すぐ効果の証明も簡単になるとは限らないと分かる。

ソフトウェアのA/Bテストなら、と思ったけれど

介入あり・なしを比べる点はA/Bテストに似ている。ただし、雲は独立したユーザーではない。一つの気象系を細かく分けて件数を増やしても、独立な試行が増えたことにはならない。風で介入の影響が対照側へ届くなら、群の分離も崩れる。

さらに、「効果がありそうな雲だけ実施する」運用と、「効果を識別するために割り付ける」実験は目的が違う。実施条件の選び方を記録しないと、降りやすい雲を選んだ効果と、種まきの効果が混ざる。

次に欲しいのは降水量の大きな数字より、適格条件、非実施の機会、割付方法、気象系の単位、風下への影響を含めた記録だ。

効果が分かっても、誰が決めるかは残る

地域 jj での増減を ΔRj\Delta R_j とし、それをどう評価するかの重みを wjw_j とすると、

V=∑jwjΔRjV=\sum_j w_j\Delta R_j

という評価が考えられる。wjw_j は例えば円/mm、VV は円になるが、これも仮想的な集計で、実際の損益を推定したものではない。

同じ降水変化でも、水が欲しい場所と、すでに水が多い場所では評価が違うかもしれない。ΔRj\Delta R_j を測る問題と、wjw_j を誰が決めるかは別だ。ここから「一地域の雨は他地域から奪った」とは導けない。まず空間的な影響を測る必要がある。

今の問いは、自然を操作できるかから、操作した差をどこまで追跡できるかへ移った。プログラム可能な地球を考えるなら、命令を送る仕組みと同じくらい、結果を検証する仕組みが気になる。

Sources

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