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水は低いところへ流れる。それなのに、なぜ街に残るのか

冠水を地形、水面の高さ、排水能力、下流の境界条件に分け、最小の貯留モデルから考える。

雨水は低いところにたまり、そこが満ちたら次へ流れ、最後は川や海へ出る。頭の中では、お椀がいくつもつながったような地形を想像していた。

でも、それなら出口がある街で、なぜ水がなかなか引かないのだろう。低い場所の順番だけでなく、そこから出ていく速さまで考えないといけない。

地面の高さと、水面の高さ

USACEのHEC-RAS技術資料では、浅水方程式が体積と運動量の保存を扱う。実際の計算は、低い地面を順番に塗りつぶす処理ではない。

以下は、その理解のために置く独自の簡略モデルだ。地面の標高を zz m、水深を hh mとすれば、水面の標高は η=z+h\eta=z+h。流れを考えるとき、まず見たいのはこの水面の差である。

面積 AA m²の区画について、

Adhdt=Ar+Qin−Qout−IA\frac{dh}{dt}=Ar+Q_{\mathrm{in}}-Q_{\mathrm{out}}-I

と書く。tt は秒、rr は降雨強度m/秒、Qin,Qout,IQ_{\mathrm{in}},Q_{\mathrm{out}},I は流入、流出、浸透などによる損失でm³/秒。どの項も体積の時間変化になっている。

出口があっても、流出量には上限がある

出口の敷居を zsz_s m、下流水位を ηd\eta_d mとし、

Qout=min⁡(Qcap,kmax⁡(η−max⁡(zs,ηd),0))Q_{\mathrm{out}} =\min\left(Q_{\mathrm{cap}},k\max\left(\eta-\max(z_s,\eta_d),0\right)\right)

と仮定する。QcapQ_{\mathrm{cap}} は排水容量m³/秒、kk はm²/秒。実際の堰や管路の流量式ではなく、逆流も省いた教育用モデルだ。

敷居か下流水位の高いほうを HH とすると、η≤H\eta\le H では排水しない。川が増水して HH が上がれば、街の地面が変わらなくても出口の効き方が変わる。

地形だけから冠水を考えると、ここを見落とす。

雨が止んだ後を、解いてみる

降雨、流入、浸透をゼロとし、下流水位を一定、流出が容量上限に達していないとする。さらに H≥zH\ge z の場合に絞り、h∗=H−zh_*=H-z と置く。初期水深 h0>h∗h_0>h_* なら、

dhdt=−kA(h−h∗)\frac{dh}{dt}=-\frac{k}{A}(h-h_*)

なので、

h(t)=h∗+(h0−h∗)e−t/τ,τ=Akh(t)=h_*+(h_0-h_*)e^{-t/\tau}, \qquad \tau=\frac{A}{k}

となる。τ\tau は秒。これで、同じ出口なら面積が二倍の区画は、同じ割合まで水位差を減らすのに二倍の時間がかかる、とモデル内で言える。

余分な水深が10%になる時間は τln⁡10\tau\ln 10。ゼロへ瞬時に落ちるのではなく、出口に対する水位差が小さくなるほど抜け方が遅くなる。

一方、排水が上限に張り付く領域では水深は毎秒 Qcap/AQ_{\mathrm{cap}}/A ずつ減る。最初は直線的、その後は指数的。水位の時系列があれば、この違いを見られるかもしれない。

お椀より、抵抗でつながったコンデンサに近い

アナロジーとしては、水面差が電圧差、流量が電流、面積が容量、1/k1/k が抵抗に対応する。単純な線形領域ならRC回路と同じ指数応答になる。

ただし、実際の水には敷居があり、通路があふれ、逆流し、流れの運動量もある。上の一方向モデルは、それを切り捨てている。電気回路に似ているから十分なのではなく、どこを追加すると似なくなるかが次の課題だ。

次は、水位が下がる曲線を比べたい

仮想の三区画をつなぐなら、出口容量と下流水位だけを変え、水位曲線と総水量の収支を確認する。実測へ進む場合は、水位だけでなく下流の水位、降雨、ポンプ作動も必要になる。指数曲線から得た kk が違って見えても、下流条件が動いていたなら出口の性能差とは言えないからだ。

数値シミュレーションも実地の検証も、まだ行っていない。それでも「最後は海へ行くはず」という直感に、つながり方と時間という二つの条件を足せた。出口があることと、水が引くことの間には、まだ計算するものがある。

Sources

  • US Army Corps of Engineers, HEC-RAS技術資料 2D Shallow Water Equations。確認日:2026-09-16 JST。
  • 数式のうち区画の収支と線形排水は筆者の説明用モデル。計算実験は未実施。実地域の浸水予測や設計には水理・土木の専門家に確認が必要。

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