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台湾を歩く旅を、距離だけで設計しない

13事例の調査を残し、歩行距離と滞在時間のトレードオフをモデル化。徒歩・中国語・現地交流を、七日間の試行へつなぐ。

台湾を、ひたすら歩いてみたい。中国語も使いたいし、現地の人と知り合いたい。途中で本を読んだり、気になったことを調べたりする時間も欲しい。

そう考えると、台湾一周の距離を先に決めるのは少し違う気がしてきた。たくさん歩けば出会う場所は増える。でも、歩き切ることに時間を使えば、一つの場所へ留まる時間は減る。その兼ね合いを、もう少し考えてみたい。

すでに歩いた人の記録を並べる

既存の調査で集めた日本人の台湾徒歩旅13事例を、比較の足場として残す。本人の記録、取材記事、転載的な紹介、計画資料が混在しているので、すべて同じ強さの一次証拠ではない。完歩した人の代表標本でもない。

日数で距離を割った「単純平均」と、実際の移動日平均は分ける。公開情報から確認できない重量や中国語力は、推測で埋めない。

人・時期方式・ルート日数 / 距離荷物宿泊歩行量中国語・交流設計上の示唆
佐々琢哉・2024南部・山岳部・日月潭などを約2か月歩く距離不明総重量5.45kg、ベースウェイト3.7kg野宿・人宅等不明楽器も交流のきっかけキャンプ・自炊・楽器込みでも5kg台。ULの基準例
田中佑典・2023–24台湾22県市を巡る「台湾微遍路」174日 / 3,856km不明寝袋を持たず、宿探し・人に頼る単純平均22.2km/日台湾との活動歴約15年。交流を旅の中心に置く最短経路ではなく、徒歩を地域理解の装置にした例
中村親治・2021–24週末ごとに前回地点から再開する分段徒步環島約2年半 / 約1,000kmリュック1つ。重量不明宿中心20〜30km/日台湾駐在。仕事上も中国語を使用長期休暇がなくても区間分割で成立する
senyikang・2018台北発、反時計回りの徒歩環島数十日級 / 約1,000km級小型ザック、テント・寝袋あり宿+キャンプ日別記録あり店や旅人との会話が多い「徒歩環島 日本人」の札が交流UIになる
Chan Kei・時期不詳西岸と北部を徒歩、東部は鉄道49日約8kg+サイドバッグホテル・ゲストハウス不明友人ができ、人宅でお茶8kgでも重い。東部を鉄道に切り替えた判断が重要
can_not_say・2025徒歩+鉄道で台湾縦断23日 / 全歩行443.5km、徒歩移動266km出国時10kg、歩行時13〜14kg駅周辺の宿移動日平均22.1km差し入れなどあり13〜14kgで20kmは負荷が高いという対照例
ノブさん・2024徒歩台湾一周数週間級不明基本野宿・テント43kmの日あり本人いわく言葉は分からず、英語と翻訳アプリを利用語学ゼロでも接点は生まれるが、距離は競技寄り
たつきち・2018–19徒歩台湾一周60日 / 1,000km超不明不明単純平均約17km/日台湾留学中旅そのものを台湾理解の方法にした例
諸藤泰佑・2010台南発着で南部・東岸・北部・西岸55日 / 約1,000km級不明不明単純平均約18km/日差し入れ・招待多数現地支援が費用と旅程に大きく影響した記録
鈴木的日常・2021–22台北起点の分段環島約半年不明宿中心不明台湾在住4〜5年。交流が多い徒歩旅を現地向け動画コンテンツにもした例
よんぽ・2025徒歩一周を計画3日目で徒歩縛りを撤回不明不明不明不明バイク、駐車、歩行空間、情報量から方針変更。中断例として重要
藤員さん・2020東岸から南部方面の徒歩環島多日 / 不明不明不明不明翻訳アプリで警察と意思疎通水疱から出血。フットケアと言語バックアップの重要例
Yusei・20261,000羽の折り鶴を渡しながら台湾一周計画51日 / 約1,000km想定不明宿泊費3,000円/日想定約20km/日想定交流自体を主目的化計画は確認できるが、本稿執筆時点で完走結果は未確認

距離だけを見ると似た旅でも、週末ごとの分割、野宿、宿泊、鉄道併用、地域での活動歴が違う。これを一つの平均へまとめるより、自分の案と何が違うかを見るほうが使えそうだ。

歩くほど増えるものと、減るもの

ここからは事例から推定した回帰式ではなく、時間配分を考える独自のモデルだ。

一日の距離を dd km、歩行速度を v>0v>0 km/時、歩行と寄り道に使える時間を T>0T>0 時間とする。休憩などを別に差し引いた予算として、寄り道の残り時間は、

s=T−dvs=T-\frac{d}{v}

になる。新しく立ち寄り候補を見つける密度を λ>0\lambda>0 件/km、移動しなくても近場にある候補を n0≥0n_0\ge0 件とし、候補数を n0+λdn_0+\lambda d と置く。

さらに、候補が実際の立ち寄りにつながる確率を p0s/Tp_0s/T と仮定する。0<p0≤10<p_0\le1 は余裕がある場合の確率。すると期待される立ち寄り数は、

E(d)=p0(n0+λd)(1−dvT),0≤d≤vTE(d)=p_0(n_0+\lambda d) \left(1-\frac{d}{vT}\right), \qquad 0\le d\le vT

と書ける。これは会話の質や満足度の式ではない。候補同士が限られた時間を奪い合う効果も、まず省いている。

半分歩けばよい、という答えを疑う

微分すると、

E′(d)=p0(λ−n0vT−2λdvT)E'(d)=p_0\left(\lambda-\frac{n_0}{vT} -\frac{2\lambda d}{vT}\right)

なので、最大になる距離は、

d∗=clip⁡[0,vT](vT2−n02λ)d^*=\operatorname{clip}_{[0,vT]} \left(\frac{vT}{2}-\frac{n_0}{2\lambda}\right)

となる。clipは値を許容範囲へ収める操作だ。n0=0n_0=0 なら歩行と寄り道に時間を半分ずつ使う。でも、これを旅の正解として採用したいわけではない。半分という結論は、候補数と残り時間への確率をどちらも線形に置いた結果だからだ。

近場に候補が多ければ、このモデルでは最適距離が短くなる。仮の v=4v=4 km/時、T=8T=8 時間なら、n0=0n_0=0 で16km。n0/λ=8n_0/\lambda=8 kmなら12kmになる。どちらも仮想値で、13事例から推定した推奨距離ではない。

もう一つ、p0p_0 は立ち寄り数全体を変えても、この形では最適距離を変えない。もし語学力や疲労によって「どれだけ歩くとよいか」まで変わるなら、確率を一定の倍率に押し込めたところから直す必要がある。

探索と滞在は、独立した選択ではない

新しい候補を探すことと、一つの場所を深く知ること。探索と活用のアナロジーで考えられそうだ。

ただ、昨日入った店へ再訪すると、候補の数が増えなくても、話せる内容が変わるかもしれない。独立した立ち寄りを数えるモデルでは、この履歴が落ちる。

そこで歩行距離だけでなく、初訪問か再訪問か、滞在時間、会話が始まったきっかけを記録したい。移動が出会いを生むのか、時間の余裕が会話を続けるのかを、少しずつ分けられる。

軽い荷物は、夕方の時間に効くのか

重量が分かる例では、佐々琢哉氏が総重量5.45kg・ベースウェイト3.7kg、Chan Kei氏が約8kg+サイドバッグ、can_not_say氏が歩行時13〜14kgと記している。野営装備や水・食料の扱いが違うので、数値だけを一直線に並べて疲労の式にはできない。

佐々氏の5.45kgには食料を含まず、3.7kgはスケッチ用具と楽器を除いた値として本人が「ベースウェイト」と呼んでいる。通常の装備分類へ自動で読み替えず、表でも本人の定義として扱う。

宿泊中心なら、テントや寝具を持たない構成を試せる。水・食料を除く3〜4kgという案は、事例から証明された適正重量ではなく、自分の装備を実測して確かめたい目標だ。

ULと街のインフラで考えたように、軽くした分を宿や店へ移すことにもなる。歩いた後に読む・話す余力が残るのか。距離だけでなく、そこを測りたい。

途中で鉄道に乗ることも、最初から選択肢にする

よんぽ氏の記録には、3日目に徒歩縛りを外した判断がある。Chan Kei氏は東部の区間を鉄道へ切り替えている。中断や方式変更も、旅の設計材料になる。

この比較から、台湾の特定道路が現在安全だとは判断できない。道路状況、天候、宿までの距離を直前に確かめ、歩けない区間や歩きたくない区間では交通へ切り替える。鉄道にも運休や駅へのアクセス条件があるので、存在するだけで安全が保証されるわけではない。

連続した徒歩軌跡を必須にしなければ、時間配分モデルの中に交通という別の選択肢を足せる。

会話の入口を、小さく作っておく

中国語が十分でなくても、翻訳アプリや英語で交流した記録はある。一方、台湾での居住経験がある人は、語学だけでなく知人、土地勘、旅の目的も違う。「中国語力が高いから会話が深い」と、この表から因果を決めることはできない。

試すなら、注文の後に一つ質問する。「おすすめは何ですか」「この辺で好きな場所はどこですか」。senyikang氏の記録にある札の発想も、会話の入口として気になる。

文案なら、旅の実態に合わせて、

日本人・徒步旅行中
我在學中文!
歡迎跟我聊天

と書ける。徒歩で旅行し、中国語を学んでいて、会話を歓迎するという意味だ。環島しないなら「環島中」とは書かない。札の効果はまだ試していない。

Yusei氏の折り鶴を渡す計画も、会話を始める理由を持つ設計として読める。人数を数えること自体を、ここで善悪の問題へ持っていく必要はない。何を試したいのかに応じて、きっかけ、会話の継続、次の行動を分けて記録すればよい。

教えてもらった場所をCapture → Thinkで残し、翌日の候補へ加える。これは人間生成型ルーティングと呼べそうだ。ただし、紹介される場所は無作為ではない。会った人や聞き方によって、旅の地図も偏りながら育つ。

七日試すなら、何を変えてみるか

以前の案にあった12〜22km/日は、まず比較するための仮の幅として置く。体調や道路条件を優先し、達成ノルマにはしない。宿泊中心、鉄道併用、水・食料を除く荷物を実測する構成で、次を残したい。

観点記録見直す仮定
移動距離、時間、路面、翌朝の疲労速度を一定にしてよいか
候補気になった店、実際の立ち寄り候補数は距離に比例するか
滞在時間、初訪問か再訪問か残り時間の線形モデルで足りるか
会話言えたこと、翻訳の使用、きっかけ語学を一定倍率としてよいか
装備重量、調達、洗濯、出し入れ軽さと管理負担を分けられるか
思考読む・書く余力、翌日も残る問い歩行以外の時間を確保できたか

七日では、天候や街の違いと距離の効果を厳密に分けるのは難しい。それでも、モデルが明らかに合わない場面は探せる。短く歩いた日のほうが再訪で話が広がるなら、距離中心のモデルを改める理由になる。

11〜12月の西岸を街ごとに鉄道でつなぐ案もあるが、具体的な区間選びと最新の交通・気象確認はこれからだ。旅をまだ実施していないので、どの配分が自分に合うかは分からない。

歩くほど世界が増えるのか。それとも、立ち止まるほど一つの場所が広がるのか。まずは、その両方を試せる旅にしてみたい。

Sources

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